正面玄関を入った左横に県庁の模型がありました。
見るとその模型の前には『キング』と書かれていました。
キング?
疑問に思いつつ会場に向かい式を終えたその帰り道、
県庁の建物名を記した看板に目が止まりました。
『あ~そうか!庁という字は人々の声を聴く建物という意味なんだ!』
現在、県庁は大規模修繕中で、
その看板の横には工事の警備の方(道路工事の時にもいらっしゃる方)がいて、
私は思わず、『そういうことですよね?』と、その方に話しかけてしまいました。
すると、日焼けしたがっしりとした体躯の、おそらく60代位のその方は、
直立の姿勢を崩さないまま顔だけをチラリと僕に向けて、こう教えてくれました。
『そこに王って入ってるでしょ。この建物がキングだからです』
キングだ!さっき見たやつだ。繋がった!
もう、楽しいわけです。
その方は続いて教えてくれました。
『そこに開港記念館があるでしょ。あれがジャック。そして税関がクイーンなんですよ』
何それ。知らないぞ。初めて聞いた。
これはこれ以上聞いてはいけない、ましてやググってはいけない。
自分で見に行って謎を解かないと。
そしてまずは開港記念館へ。
でも残念ながら休館日で中には入れず。
確かに言われてみれば、レンガ作りで先端の尖った塔はジャックっぽい。
どこかにそれを現わす何かがないかと建物を一周するも見つからず。
ならばクイーンだと税関へ。
県庁も開港記念館も税関も、どれも昭和初期の建物で、
クイーンは塔の先端が丸みを帯びていて、言われてみればこれも確かにそんな気が。
そして中へ。
そして謎は解けました。
昭和の初期、大桟橋に着岸する外国船は、
県庁、開港記念館、税関の3つの塔を目印にし、
その位置関係から大桟橋の位置を確認していたそうです。
彼らはその塔が何の建物か分からないので、
威厳のある建物をキング、先端の尖った凛々しい開港記念館をジャック、
先端が美しい丸みを帯びたラインの税関をクイーンと、
それぞれの塔にニックネームをつけて呼んでいたそうです。
そしてその外国の船員たちが付けたニックネームが、
県庁の看板に『王』の文字として入った。
あぁ、この、昭和初期の人たちの洒落心よ。
そしてあの工事の警備の人の一言よ(なぜ知ってた!)。
誰かに言いたい、でも伝わらないよな。あの場に居ないと。
でも言いたい。
そんなことを悶々と思いながら一日を終え家に帰ると、
次男がアルバイトから帰ってきました。
『ちょっと~聞いてくれる~?』
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