私がこの業界に入る前に勤めていた会社の同僚M君から依頼があり、
ロールスクリーンを付けてきました。
当時の部署は若い人が多く、
皆、個性と才能に溢れ、そして仲が良かった。
ある年の、梅雨がそろそろ開けそうだという時、
Mが「湯河原の海開きで、いかだレースやるんすよ」と
何気に言った一言がそもそもの始まりでした。
なぜそうなるのか今でも良く分からないが、
「出るか!」となり、
休日はMの家に集まって、特に設計図もないままに勘で作り始めました。
それは角材を買いに私と同僚のKで、ホームセンターに行った時のこと。
長い材料なのでMのお父さんの軽バンを借り、
後から角材を入れて私は先に運転席へ。
ですがKがなかなか助手席に戻って来ません。
「どうしたの?」
「サイトーさん、なんかギリギリ入んないっす」
こういう時に慎重さに欠けるのが私の悪いところで、
「強く閉めれば入るんじゃない?」ドンとドアを押したその瞬間、
前の方でガシャン!という大きな音がした。
「今、何か音したよね?」
「サイトーさん!大変です!フロントガラスが粉々に割れてます!」
そこにはフロントガラスを突き破った角材が…。
「ど、どうしましょう?」
「Kよ落ち着け、ワシントンは桜の木を切った時…」
「サイトーさん、冗談言ってる場合じゃないです!」
真面目に言ったつもりだったんだけど…。
そんなこんなでやっと出来上がったイカダでしたが、
当日の会場にはフルカーボンで出来たプロの力作が集まっており、
完全に場違いな状態に。
私たちのイカダは見事最初の波で大破して終わりました。
あれから20年。
私たちも当時の上司よりもずっと上の年齢になり、
お互い変わんないなあと言いつつも、
きっと変わっているのだと思います。
今回も天井の軽天下地の方向を確認して、
ロールスクリーンの巻直径と窓枠の擦り具合を確認して、
持ち出し金具も事前に用意しての取付け。
あの当時のアバウトな私ではないのです。
仕事に関しては、ですが。